Q&A その1

Q:最近、歯みがきの時に歯ぐきから出血します。歯周病でしょうか?
   また、治りますか?

A: 歯をみがくときの歯肉からの出血は、歯周病の症状の1つですから
   歯周病の可能性が高いです。
   しかし軽度であれば比較的簡単な治療で治ります。早期の治療をおすすめします。

Q:歯周病の治療を受けたいのですが、歯石を取るのが痛そうで心配です。
  大丈夫でしょうか?

A: 歯石には歯ぐきの上につく緑上歯石と歯ぐきの中につく緑下歯石があります。
   緑上歯石であればあまり痛くなく取ることができます。
   緑上歯石は取る時に痛くないように麻酔をしてから取ることも多いです。
   痛みが強い時は「麻酔をしてください」と言いましょう。

Q:タバコがどうしても手離せません。
    タバコって歯周病にそんなによくないのですか?

A: タバコは歯周病に悪い影響を与えることが研究でもわかっています。
   歯周病が進行している方には禁煙をおすすめしています。
   喫煙者は治療に対する歯肉の反応も悪く治りにくいです。
   禁煙ができなくてもせめて本数を減らすか軽いものに変えましょう。

Q:歯周病治療にレーザーを使うレーザー治療って聞いたことがあるのですが、
  よくきくのですか?

A: 歯ぐきが腫れて痛みが強い時、急性症状の時、レーザーは威力を発揮します。
   あまり痛くなく切開、排膿させることも可能です。
   通常の治療においてレーザーだけで歯周治療が全てできることはありません。
   あくまでも補助的な治療法です。
   ただ、レーザー治療はほとんど痛みを伴わないため、毎回のように
   レーザーを希望する方もいらっしゃいます。

Q:夫がひどい歯周病です。
    最近私も少し歯肉がはれるのですが歯周病ってうつるんですか?

A: 歯周病は歯周病菌が感染して起こる病気です。
   そのため、うつることがあります。
   最近では夫婦間での感染が問題になっています。
   当院でもご夫婦いっしょに治療を受けられる方も多いです。
   ただし、十分なプラークコントロールをしていれば夫婦間での感染を予防できますので
   心配しないでください。

Q:私の母親は若いうちに歯周病で歯を失い、今は入れ歯です。
    私も心配なんですが歯周病って遺伝するのですか?

A: 高度に歯周病が進行している方と、その方の子供もいっしょに診察することも多いのですが、子供にも歯周病が進行している方が多くいらっしゃいます。 遺伝的要因が強いのか後天的に感染しているかははっきりとはわかりませんが、母親と娘に見られるケースが多いことから、遺伝的な要因が強いと思われます。 DNA検査がもっと広がれば遺伝かどうか、また歯周病のリスクなどわかるようになります。

Q:歯周病を治したいのですが、歯みがきが面倒で苦手です。
    歯を磨かなくても簡単に治す方法はありませんか?

A: 歯周病は細菌感染症ですから今のところ歯ブラシで原因菌のかたまりのプラークを機械的に除去することが一番大切です。 今後はワクチンや薬で簡単に治せる時代が来るかもしれませんが、今は我慢してブラッシングをがんばって下さい。

Q:歯周病は必ず治療を受ければ治る病気ですか?

A: 歯周病は成人の方の約80%がかかっていると言われていますが、ほとんどの方は軽い歯周病ですので簡単な治療で治ります。 約10%の方が高度に進行している方で、難治性歯周炎とよばれる治りにくい歯周病も この中に含まれます。 また、中年以降の男性でタバコは1日2箱、仕事の疲れ、ストレスで歯ぎしりをする。 歯みがきは忙しくてできない、治療の予約はキャンセルしがち、こういった方は治すのが本当に難しいです。

Q: 歯周病の治療を受けたいのですが、どの歯医者を選べばいいのでしょうか?

A: まず歯周病治療に医院全体で取り組んでいる歯科医院を選んでください。歯周病治療について詳しく説明がありますからすぐわかると思います。次に医院に歯科衛生士がいること。歯周病治療にこの歯科衛生士の存在は欠かせません。次に歯石除去に機械の超音波スケーラーだけでなく、手用器具のキュレットを使用している こと、これも大切です。 「キュレットを使って歯石除去をして下さい。」と言いましょう。

Q&A その2

Q1.:「歯周病」と「歯槽膿漏」は別の病気ですか?

A: ・歯槽膿漏と歯周病は、基本的に同じ病気です。
   ・昔は歯槽膿漏と一般的に呼ばれていました。
   ・今はCM等で有名になったので、「歯周病」の呼び方が一般的です。
   ・歯周病も歯槽膿漏も、歯周組織が破壊される怖い病気です。

Q2.:歯周組織とはどこを指しますか?

A: ・歯グキ(また、歯肉と呼ばれます)。
   ・歯槽骨。 これは歯の根っこが埋め込まれている顎の骨です。
   ・歯根膜。 これは歯の根っこと骨の間にある特殊な膜です。

Q3.:歯周病はどんな病気ですか?

A: ・歯周病は、歯周組織の 炎症か 感染から起こります。
   ・歯周病には2つの主なタイプがあります。

   ◆歯肉炎
    o これは、歯グキのみに、炎症や感染が起きています。骨には影響は出ていません。
    o 成人の多くの人に、歯肉炎は大なり小なりあります。
     o 歯肉炎は放置すると、 歯周病に移行することがあります。

   ◆歯周炎
    o これは、歯周組織に感染や破壊を起こす病気です。
    o 慢性歯周炎はゆっくり発症しますが、歯周病のある種類は、急速に進行します。
    o 歯周病は、成人ではごくありふれた病気です--
      少なくとも50%の大人は、歯周病のいくつかの兆候を示しています。
    o 歯周炎は、歯の損失の主な原因です。

Q4.:何が歯周病を引き起こしますか?

A: ・歯の表面に付着する歯垢(しこう)は、プラークとも呼ばれますが、
    歯肉炎と歯周炎の主な原因です。
    o 口の中のある種類のバクテリアは歯周病を引き起こします。
    o 歯石は、歯にくっついて硬くなった歯垢であり、歯周病の原因の1つです。
     それは、黄色や黒色に色を変化させながら、歯に強固にくっ付きます。
    o 歯周病の進行は、患者の体調によって、進行するスピードがかなり違ってきます。
   ・歯周病菌の夫婦間での感染の事例は多く報告されています。

Q5.:歯垢、歯石はどんなものですか?

A: ・歯垢は、バクテリアと共に、歯にくっつくバイ菌の塊です。
    バイ菌の集合体をバイオフィルムと呼ぶこともあります。
    o 歯垢は、うがいでは取れません。
     歯を磨くことによってしか歯垢を取り除くことはできません。
     デンタルフロスを用いて歯の間を掃除するのも、歯垢の除去には有効です。
    o 歯垢の除去ができないなら、それは歯周病を引き起こす場合があります。
    o 歯垢が歯の表面により長く残存するならば、歯肉炎歯周炎のリスクは、より高まります。
    o 歯垢が歯磨き等で除去できないなら、それは、歯石となってより硬くなり除去できなくなります。
    o 歯石は歯肉の炎症を引き起こします。定期的な歯石除去が必要です。
    o 歯石の沈着は、大人だけでなくて子供たちにも起こります
    o 柔らかくて、ねばねばする炭水化物が多くて高い糖分の含まれる食事は
      より歯垢の形成を促進します。

Q6.:他の何が歯周病を悪くするのですか?

A: ・歯周病は以下の理由でより悪くなる場合があります。
    o 思春期や妊娠中、ホルモンの影響で歯周病になりやすい時期があります。
    o 糖尿病や血液の遺伝病などの医学上の問題。
    o 喫煙が歯周病と他の口腔疾患の原因となることが知られています。
    o 避妊薬や、心臓病を治療するためのドラッグなどの薬物療法。

Q7.:私が歯槽膿漏や歯周病にかかっているのはどうしたら
   わかりますか?

A: ・チェックすべき症状は以下の通りです。
    o 歯肉の出血、または歯を磨いた時に歯ブラシにつく出血
    o 口臭
    o 歯垢や歯石が沈着している歯
    o 歯の動き
    o 歯の位置が変わる
    o 歯の間に現れる隙間
    o 歯の間に食物がはさまり出す
    o 歯が長く見えるようになってきた、歯肉が下がってきた
   ・歯垢や歯石で引き起こされる歯肉炎は初期では痛みを伴わない場合が多いです。
   ・高度に進行して初めて、痛みや腫れが出る場合が多いです。

Q8.:歯科医師はどのようにして歯周病を診断するのですか?

A: 「50%以上の成人が歯周病の病気の兆候を示しています。」
    -歯周病学会レポート

   ・私たち歯科医師は以下の要素を調べます。
    o 全身の病気の既往歴、また歯周病に関する家系的な要素
    o どれくらいあなたは歯を磨いているか?
    o 顎の骨の量と、あなたの歯肉の状態
    o 歯肉組織の色、形、品質、および量
    o 歯茎での出血と うみの存在
    o 歯の周りの「歯周ポケット」の深さ
    o 歯周組織の付着の損失
    o あなたの歯の動き
    o エックス線診断
    これで骨損失の程度がよく理解できます。

Q9.:歯周ポケットは何ですか、それはなぜ深刻な問題ですか?

A: ・歯周ポケットは、 歯周病が進行して、歯周組織が破壊されたときに出来る歯と歯肉の間で
    できるスペースです。
    o 歯肉と歯との付着が引きちぎられます、そして、歯周ポケットが形成されます。
    o 歯周ポケットの存在は、歯周病がどれくらい進行したかを示しています。
    o 歯周ポケットは、歯周病の原因のバクテリアが安全に住むための場所を提供しているので、
     歯周病が進行します。
    o 歯の周りの骨に感染するようになると、より歯周ポケットの数値は増えます。
     歯の骨のサポートが損失することによって、歯は動き出します。
    o 口臭が増します。
    o 歯周ポケットの問題を減らすためには、歯周ポケットを排除するか、または深さを少なくとも
      減少させることです。

Q10.:歯周病は予防できますか?

A:・定期的な毎日のブラッシングでの歯垢除去で歯周病は予防できます。
   自宅でのセルフケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアのダブルでのケアが必要です。
  ・自宅でのセルフケアは以下を含みます。
    o 1日に少なくとも3回の慎重なブラッシング
    o 可能なら薬効のあるマウスリンスの使用

歯槽膿漏、歯周病が招く口臭

口臭の原因のNo1は歯槽膿漏、歯周病

9.jpg最近口臭が気になって、歯科医院を来院する方が増えています。
自分では臭くないと思っていても、家族や友人から指摘されて来院する方もいらっしゃいます。
誰もが嫌な口臭ですが、実は口臭の一番の原因は歯槽膿漏、歯周病であることが多いのです。

息とともに口腔より発生する悪臭を口臭といいます。
自分の口臭は気づかないことも多いですが、逆に口臭がないのにあると思いこんで悩む方もいらっしゃいます。最近の研究では口臭の約8割がお口の中に原因があることがわかっています。
口の中の細菌が食べかすなどを分解するときに口臭のもとになる臭気成分を作り出します。
「メチルカプタン」「硫化水素」「ジメチルサルファイド」という3つの揮発性硫化物が主な臭気成分です。

口臭の種類と対策法

生理的口臭
朝起きた時や疲れた時、また緊張した時に感じる口臭を生理的口臭といいます。特に朝起きた時は誰でも口臭を感じやすいものです。これは寝ている間、唾液の分泌が少なくなるため細菌が増えることによって口臭が発生しやすくなるためです。
この生理的口臭は健康な人でも誰でも起こることがありますから気にすることはありませんが、お茶を飲んだりうがいをしたり、お口の中の唾液を出すことによって解消されます。

病的口臭
舌苔、歯周病、むし歯、唾液の減少などによって起こる口臭が病的口臭です。
病的口臭には治療が必要です。

・歯槽膿漏、歯周病・虫歯
  歯槽膿漏、歯周病が口臭の大きな原因の一つです。
  特に歯周病が進行して、歯肉から出血や排膿が認められるようになると強い口臭を感じる
  ようになります。
  また、虫歯も大きい虫歯を放置していたり、気づかなくてもかぶせの中で虫歯が進行して
  いると口臭の原因になります。
  歯科医院で歯周病の治療、むし歯の治療を完全に受け、また、家庭でのケアも行うことが
  大切です。

・舌苔(ぜったい)
  口臭の大きな原因の一つがこの舌苔です。
  舌苔とは古くなった細胞などが舌についたもので、細菌によって分解されると悪臭を
  発します。
  舌苔がつきやすいのは舌の奥の部分です。
  この部分を歯ブラシでそっとみがいてみてください。力を入れすぎると舌の表面を傷つけて
  しまうことがあります。

・唾液の減少
  唾液には口の中を消毒殺菌する役目があります。
  この唾液が減少すると細菌が増えて口臭が強くなります。要介護高齢者の方の口臭はこの
  唾液減少が原因のことが多いです。また、薬の副作用で唾液の減少が起こる方も多いです。
  口が渇いていて口臭を感じる時は、うがいをしたりお茶を飲んだり、また舌や口を意識的に
  動かして唾液の分泌を促してみてください。
  要介護高齢者の方には口腔内の保湿剤であるヒアルロン酸ナトリウム(商品名絹水)を利用
  すると効果的なこともあります。

・心因性口臭(自臭症)
  生理的な口臭以外は認められないのに、自分に口臭があると悩んでいる方がいらっしゃい
  ます。
  これを心因性口臭とか自臭症と呼びます。
  解消法はまず気にしないことですが、心配な方は歯科医院で口臭の検査をしてもらいましょ
  う。
  最近では口臭の原因の臭気成分を客観的に計測できる機械がありますので、相談してみて
  ください。

歯槽膿漏、歯周病が招く怖い病気

8.jpg歯周病は進行すると歯がぐらぐらしたり、うみが出たり、しまいには歯が抜けてしまう病気であることは皆さんご存じの通りです。ただ、歯周病の影響は歯のことだけではとどまらないことが最近の調査でわかってきています。
例えば、お口の細菌から「感染性心内膜炎」を起こしたり、高齢者の方の「誤嚥性肺炎」を引き起こすことがあります。

歯周病と「心臓病」
ノースカロライナ大学の研究によると歯周病のある人が心臓病(狭心症や心筋梗塞など)になる確率は歯周病のない人に比べて1.5〜3倍に上がることがわかっています

歯周病と「早産」
同じくノースカロライナ大学の研究によると、歯周病の女性が低体重児を早産する確率は歯周病のない女性の約7倍になります。

歯周病と「糖尿病」「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」
歯周病が糖尿病の合併症の1つであることがわかってきています。
また、口の中の細菌と「骨粗鬆症」との因果関係もわかってきています。

歯周病と「肺炎」
高齢者の方が歯周病の原因菌を吸い込むと誤嚥性肺炎を起こしやすいです。この肺炎は現在死亡率の上位です。

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以上の様に歯周病が全身の健康を損なうことがわかってきています。歯周病をしっかり治療することが上記の病気を予防することになります。
また、治療終了後、いくら念入りに歯磨きをしても限界があります。少なくても6ヶ月に1回はプロの歯科衛生士による歯の専門的クリーニング(PMTC)を受けて下さい。
今までは歯医者は虫歯や歯周病を治すところと思われていましたが、今後は全身の健康のために歯医者で定期的に口の中のクリーニングをしてもらうと考えてください。